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コラム

組織作り

職場の「人」に関わる問題の解決が難しい理由

事業活動を行なう上で、その現場となる職場において、日々様々な問題・課題が目の前に現れます。これらの問題・課題には比較的簡単に解決できるものから、なかなか解決できないものまで様々でしょう。

例えば、不景気で運転資金が足りなくなったのであれば、借入や出資者を探すことで解決できます。また、人が増えてスペースが足りなくなったのであれば、広い事務所に引っ越せばいいでしょう。設備が故障したのであれば、修理するか新しいものを購入すれば解決します。

しかし一方で、ある部署のリーダーと部下の関係が良くない、部署間の対立がある、従業員が仕事に誇りを持てない、リーダーが育たない、など、問題・課題に人、特に複数の人が絡むと一気に解決が難しくなります。

そして、多くの働く人が頭を悩ませているのがこのようななかなか解決しない問題だということは想像が付くかと思います。

ではこのような問題の解決が難しい理由は何でしょうか。

技術的問題と適応課題

ハーバード・ケネディ・スクールのロナルド・ハイフェッツ教授は、そもそも課題には2つの種類があると述べています。それが、技術的問題と適応課題です。

まず、技術的問題に関してハイフェッツ教授は次の様に言っています。

技術的問題は、かなり複雑で重要な場合もあるが、すでに解決策が分かっており、既存の知識で実行可能である。高度な専門知識、組織内の既存の構造、手続き、実行方法によって解決できる。

つまり、技術的問題は問題に対する解決策がすでにあるというものです。そのため、その「すでにある」方法を適用すれば問題は解決します。

一方、適応課題については次の様に言っています。

適応課題は、人々の優先事項、信念、習慣、忠誠心を変えなければ対処できない。発見を導くような高度な専門性だけでなく、ある凝り固まった手法を排除し、失うことを許容し、改めて成功するための力を生み出さなければ前に進められないのだ。

適用課題は、技術的問題と違い明確な解決方法は存在しません。技術やスキルでは解決できず、自分自身のものの見方や考え方を変えたり、関わる人との関係性を変える、つまり適応しないと解決できないという特徴があります。

人にかかわる問題・課題の解決が難しい理由

人にかかわる問題・課題はほとんどが適応課題、もしくは技術的問題と適応課題の混在です。

それにも関わらず、技術的問題として技術やスキルの適用だけで解決しようとすると問題が解決されないどころか、こじらせてしまうこともあります。

そのため、まず目の前にあるのが、技術的問題なのか適応課題なのかを見極めること、もしくは、技術的問題と適応課題に切り分けることがとても重要です。

例えば、人事評価制度を運用しているが、従業員の納得感やエンゲージメントに良い影響を及ぼしていないという問題はどのように考えれば良いでしょうか。

このような問題の解決方法として、人事評価制度の作りが悪いから、新しく作りなおすという解決策が考えられます。

確かに、そうなのかもしれません。実際、人事評価制度に関するお悩みをお聞きした際、制度そのものに問題があるケースが多く見られます。そういう場合は、解決策のひとつとして人事評価制度の作り直しは有効です。

しかし、それだけでは解決しません。

人事評価制度の作り直しは技術的問題に対するアプローチです。ところが、人事評価制度には適応課題も含まれるのが一般的です。

そもそも、評価制度を通して納得感を得るということは、その人のものの見方や感じ方の問題です。これを仕組みだけで解決することは不可能です。そのため、人事評価制度の作り直しという技術的問題に対するアプローチだけでなく、それを運用する人にかかわる適応課題に対するアプローチも同時にやっていく必要があります。

適応課題に向き合うことはかなりの時間と労力を要します。しかも、技術的問題と違って明確な答えがない世界です。このような世界に慣れていない人が多いのも事実です。

まずは、今向き合っている問題・課題に関して、技術的問題と適応課題を切り分けてみましょう。そして、適応課題に対して技術的問題のアプローチで解決しようとしていないかチェックしてみてください。

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