事業承継を成功させるマネジメント視点の取り組みとは
「後継者難倒産」という言葉があります。東京商工リサーチの調査によると2022年上半期の貢献者難倒産が過去最高を記録したそうです。
こういった状況を見ると、後継者がいる会社は「後継者がいる」という状況だけで幸せとも言えます。しかし現実には、事業承継がうまく行かず、代替わりした後に衰退していく会社も多いのが現実です。
なぜ、代替わり後に衰退してしまうのでしょうか。様々な要因がありますが、マネジメント視点で見るとそこにはひとつの重大な原因があります。
それは、現トップは承継者に対して自信のコピーである事を望み、承継者は現トップと自分を比較しこえられないという現実に打ちひしがれるというものです。
現トップからみたら承継者はいつまでも未熟に見えます。親にとって子どもがいつまでも子どもなのと似ています。たとえ口では、自分なりのやり方で自由にやってよいと言っていても、実際には言っていることと逆の行動を取っているのではないでしょうか。
承継者は、自分が承継者と決まった瞬間から現トップと比較されます。時には変化を嫌う者から、現トップと同じであれと望まれます。周囲は、承継者がいるというありがたさを忘れ、承継者の未熟な面ばかりを見てしまいます。
少々極端な書き方をしましたが、程度の差はあれ事業承継を控えている会社では同じ様な構造ができあがってしまいます。このことを解決する糸口がP.F.ドラッカーの次の言葉です。
草創期においては、企業は一人の人間の延長である。しかし、一人のトップマネジメントからトップマネジメント・チームへの移行がなければ、企業は成長どころか存続もできない。
P.F.ドラッカー『現代の経営〈上〉』
社長がやっているトップマネジメントの仕事は一人でできるものではありません。本来はチームでやることなのです。事業承継はトップマネジメントをチーム化する絶好のチャンスです。
承継者は現トップがやっていたことを全てできる様になる必要はありません。トップマネジメントの仕事のうち、自分の強みにあったものに注力し、あとは他の人間に任せればいいのです。
トップマネジメントの仕事とは、一人の仕事ではなく、チームによる仕事である。トップマネジメントの役割が要求するさまざまな体質を、一人で併せもつことはほとんど不可能である。しかも、一人ではこなしきれない量がある。(中略)トップマネジメントの仕事がチームの仕事であることを認識することは、特に中小の企業において重要である。
P.F.ドラッカー『マネジメント〈下〉』
ちなみに、トップマネジメントのチーム化は何も事業承継のタイミングでのみ行うものではありません。事業が軌道に乗りある程度組織化された段階で検討することもおすすめです。
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