動機づけとコミュニケーションを図る~マネージャーの5つの仕事③~
以前の投稿で、管理職・リーダーがやるべき仕事としてマネージャーの5つの仕事を取り上げました。
今回は5つの仕事の三つ目、動機づけとコミュニケーションを図るです。
5つの仕事の二つ目、組織するで仕事の設計を行いました。仕事の設計を通して生産的にしたのですが、実際に仕事をするのは人です。いくら完璧に設計された仕事でも、それをやる人が適切に行ってくれなければ成果はあがりません。そこで、チームメンバーの動機づけとコミュニケーションが必要になります。
動機づけ
組織にとってそこで働く人の動機づけは共通の課題です。全ての組織が日々試行錯誤を繰り返しているのではないでしょうか。ここでは、ドラッカー教授が提供してくれている、働く人の動機づけのヒントを3つ紹介したいと思います。
働くことの5つの側面
ドラッカー教授は仕事そのものと働くことを明確にわけています。仕事のマネジメントと人のマネジメントで、動機づけは人にかかわる要素です。その働くことには5つの側面があるとドラッカー教授は言います。それが次の5つです。
- 第一に、生理的な側面がある。人は機械ではなく、機械のように働きもしない。
- 第二に、心理的な側面がある。人にとって、仕事は重荷となる一方において、必要ともなる。辛苦となる一方において、祝福ともなる。
- 第三に、社会的な側面がある。組織社会では、働くことが人と社会をつなぐ主たる絆である。
- 第四に、仕事とは生計の資である。
- 第五に、政治的な側面がある。集団内、特に組織内で働くことには権力関係が伴う。
これらの側面を知り、人のマネジメントを行うことで動機づけにつながります。
X理論とY理論について
ダグラス・マグレガーが著書で紹介したX理論とY理論についてドラッカー教授はどのように考えていたのでしょうか。
X理論は、人は怠惰で仕事を嫌うので、仕事を強制しなければならず、アメとムチの両方を必要とする考え方です。対してY理論は、人は働く欲求を持ち、仕事を通じて自己実現と責任を欲するという考え方です。
まず、アメとムチによるマネジメントであるX理論はもはや無効であると言っています。
ここで言うムチとはもともと飢えと恐怖でした。しかし、今日経済的な最低水準は生存の水準を超えています。失業しても飢えることはありません。生きてはいけます。ムチとしていわゆる罰を与えることを使うという考え方もありますが、前述の通り本来は飢えと恐怖だったとしたら、罰則では弱いと言えます。
次にアメですが、これはいわゆる物質的報酬です。しかしこれもマネジメントのツールとして力を失いつつあると言います。これは、物質的な期待の増大が原因です。つまり、飢えや恐怖がムチとして機能していた時代の物質的報酬とは比較にならないほど、要求が高まり膨大になっているのです。わかりやすく言えば多少の賃金では機能せず、膨大な賃金を必要とするということです。
仕事への責任(responsibility)
ドラッカー教授は、動機づけの重要な要素として責任(responsibility)を挙げています。そしてそのために必要なものとして次の3つを挙げています。
- 仕事を生産的なものにする
- 情報をフィードバックする
- 学習を継続する
加えて、上記3つに働く人が参画しなければならないとも言います。さらに、これら3つに加えて、必要なものとして、権限を明確にすることも挙げています。
責任という言葉に関してたびたびお伝えしていますが、日本語でいう責任のニュアンスはどちらかと言うとaccountabilityです。責任を取って辞めるとか、責任を取れ!と責められるとか、悪い場面で使われることが多い責任ですが、ここで言う責任はresponsibilityであり、期待に応えるというニュアンスです。
コミュニケーション
チーム内のコミュニケーションを考えるとき以下の3つのポイントにわけて考えるとよいです。
- 何をコミュニケーションするのか
- どのようにコミュニケーションするのか
- コミュニケーションの原理
何をコミュニケーションするのか
世の中にはコミュニケーション手法のノウハウが溢れていますが、そもそも何をコミュニケーションすべきかという点にはあまり触れれられていない気がします。ドラッカーマネジメントの視点で考えたときコミュニケーションすべきことは例えば次の様なものです。
- 組織のミッション…私たちはなんのために仕事をしているのか
- 顧客と顧客価値…私たちは誰にどんな価値を提供したいのか
- 組織の成果…そのために手にしていくべきことは何か
- 目標…成果を得るためには具体的にいつまでにどんな結果を出していくのか
- なすべきこと…目標を達成するために必要な具体的な行動は何か
- 強みとワークスタイル…私、そしてあなたの強みはワークスタイルは何か。
どのようにコミュニケーションするのか
一般的に語られるコミュニケーション手法の話です。伝え方、聞き方などのテクニックを学ぶことでコミュニケーションをより円滑にすることができます。
コミュニケーションの原理
ドラッカー教授は、コミュニケーションを成立させるものは受け手であるといいます。また、加えてコミュニケーションについて4つの原理を示しています。
- コミュニケーションとは知覚である
- コミュニケーションとは期待である
- コミュニケーションとは要求である
- コミュニケーションと情報は異なる
これら4つの原理を知ることでコミュニケーションの土台となります。
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