評価、測定する~マネージャーの5つの仕事④~
以前の投稿で、管理職・リーダーがやるべき仕事としてマネージャーの5つの仕事を取り上げました。
今回は5つの仕事の四つ目、評価、測定するです。
ドラッカー教授は、マネージャーの仕事としての評価を、評価の尺度を定めることだと言います。評価の尺度ほど組織全体と一人ひとりの成果にとって重要な要因はないとも言っています。
マネージャーは部下の全員が組織全体の成果と自らの成果についての尺度をもつようにする必要があります。
評価は誰のためのものか
ドラッカー教授は著書『マネジメント〈中〉』で次の様に書いています。
評価とは上からの管理ではなく、自己管理を可能にするためのものである。この大原則を破っていることが、マネジメントの仕事のうち評価測定が最も貧弱な分野になっている原因である。上からの管理手段としているかぎり、評価はマネジメントにとって不毛な分野であり続ける。
P.F.ドラッカー『マネジメント〈中〉』
マネージャーの仕事は評価であると言うと、上司であるマネージャーが部下を評価するということをイメージする人が多いかと思います。もちろんそういう側面があるのは否定しませんが、本質は違います。評価は自己管理を可能にするものです。つまりマネージャーの役割は、部下が自己管理のために自ら評価することをサポートすることです。
では、どのようにサポートすればいいのでしょうか。それには例えば次の2点が挙げられます。
ひとつは尺度を決めること。評価の対象は成果や活動です。それらを何を持って測るのか。ものさしと目盛りを決める必要があります。マネージャーは、部下が適切な尺度を決められるようにサポートします。
もう一つは情報を提供すること。部下が、決めた尺度にしたがって自らの仕事ぶりを評価するには、そのための情報が必要です。マネージャーはその情報を提供しなければなりません。人は情報を与えれば行動を修正できるという機能を持っています。決められた尺度に合った情報を、適切なタイミングで、適切な状態で伝えるようにしましょう。
測定することで意識が変わる
前述の通り、人は情報を与えれば行動を修正する機能があります。これに関連してドラッカー教授は次の様に書いています。
管理のための測定を行うとき、測定される対象も測定する者も変化する。測定の対象は新たな意味と新たな価値を賦与される。したがって管理に関する根本問題は、いかに管理するかではなく何を測定するかにある。
P.F.ドラッカー『マネジメント[エッセンシャル版]』
人は、何かを測定しようとしたその瞬間から、その対象に価値を置き、行動が変わります。売上を集計し始めるとより多くの売上を求めるでしょう。労働時間の集計を始めると労働時間は減少することがあります。食べたものや体重を記録することで体重を減らすレコーディングダイエットという手法もこの特性を利用したものです。
ただし、時に測定すること自体が目的となってしまい、本来の目的を見失うこともありますので注意が必要です。
測りにくいものこそ重要
何を尺度として測定するかを考えたとき、測定しやすいものとそうでないものがあることに気がつきます。例えば、数値化できる定量的なものは測定しやすいですが、数値化しづらい定性的なものは測定しにくいです。また、組織の中のことは測定しやすいですが、成果のある外の世界のことは測定しにくいでしょう。
しかし多くの場合、測定しにくいものの方が重要です。数値化しづらい定性的なもの、成果の存在する外の世界に目を向けましょう。尺度を決めるとき、測定しやすさはいったん脇に置いておき、何が重要かを優先的に考えてください。重要なものが見つかった後に、どうやって測定するかを考える様にしましょう。
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