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近江商人の精神「三方よし」とは

このコラムは傍楽通信2014年7月号の記事をリライトしたものです

「三方よし」という言葉を一度は耳にされたことがあるのではないでしょうか。「売り手より、買い手よし、世間よし」という近江商人の共通理念を表した言葉です。商いにおいて、まずは売り手がしっかりと利益を確保し事業の持続性を担保した上で、買い手であるお客様にも喜んでもらうこと、そのような事業活動を積み重ねることで、世間が良くなっていくという思いが込められています。

三方よしは日本版CSR

CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)という言葉が出てきてずいぶんたちます。CSRとは、企業は利益を追求するだけでなく、自らの活動が社会に及ぼす影響に責任を持ち、企業活動に関わる全ての存在に対して責任を果たしていこうというものです。近江商人の三方よしは日本の歴史や文化の中で培われてきたCSRの源流とも言えます。商売における当事者である売り手と買い手、この両者が幸せになることだけではなく、その先にある社会も良くなってほしいという考え方、素晴らしいと思いませんか?

さてこの三方よし、実は「売り手よし、買い手よし、世間よし」という順番がとても大切です。このことに注目するとCSRの観点だけではなく色々なことに気づかされます。

三方よしという言葉が教えてくれること

例えば事業活動において、売り手よしのひとつとして利益を確保し事業の持続性を担保するということを挙げました。少し視点を変えると、事業活動をしているのはその組織に属している人です。つまり、組織そのものが良い状態だけでなく、そこで働く人たちが「よし」の状態になることが重要です。そうすることによって「買い手よし」、つまりお客様を「よし」の状態にすることができます。あなたの組織で働く人たちは「よし」の状態になっていますか。また、そもそもどのような状態が「よし」と言えるでしょうか。そしてその先にあるのが「世間よし」、つまり社会(厳密には世間とは違う概念ですが)が良くなることこそ、組織が存在する大きな意義となります。

さらには、一人ひとりの人生にも通じるものがあります。あなた自信が側にいる人を幸せにしたいと思うとき、まずはあなた自信が幸せになりましょう。そうすることではじめてそばにいる人を幸せにできるのではないでしょうか。自分が「よし」の状態ではないのに他人を「よし」にするという様の自己犠牲を伴った状態は長続きしません。世の中の人みんなが自分自身を「よし」の状態にすれば社会全体が良くなる、こんなことも三方よしは教えてくれる気がします。

三方よしという言葉の原点

ところでこの三方よしという言葉ですが、実は近江商人が作ったわけでも使っていたわけでもないというのは意外と知られていません。この言葉を近江商人の理念として使い始めたのは後の近江商人研究家です。五個荘の近江商人、中村治平宗岸が跡継ぎの孫に向けて書いた書置の一部が近江商人の共通理念をよく表しているとして「これは売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よしだ」と表現したのが始まりです。三方よしという言葉自体は昔からあったようで、例えばモラロジーの提唱者である廣池千九郎が「自分よし、相手よし、第三者よし」と表現していますし、最近の研究では江戸時代の文献に三方よしという言葉が使われているのが発見されたそうです。

最後に

あなたの会社の「よし」な状態はどのようなものでしょうか。またそこで働く人たちの「よし」とはどのような状態でしょうか。そして、お客様の「よし」とはどのような状態でしょうか。さらにその先にある「世間よし」とはどのような状態でしょうか。是非一度、組織で話し合って言葉にしてみてください。

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