職場における問題行動を解決するために有効な氷山モデル
成果を上げる組織を作る上で誰しも悩む人の問題。職場において人にかかわる問題がなかなか解決しないのはなぜかという内容で、以前に以下の記事を掲載しました。この記事の中で、理由として挙げたのが、人にかかわる問題は適応課題だということ。技術的課題と適応課題に関してはとても重要な考え方なので、改めて以下の記事を読んでみてください。
今回は、この適応課題への向き合い方として具体例を元に深掘りしてみたいと思います。
氷山モデル
組織開発でよく用いられる考え方に氷山モデルというものがあります。
問題として表面化しているのは水面からでているごく一部であり、その下には行動パターン、構造、メンタルモデルという見えていない要素があります。問題を解決するには見えているもの対処ではなく、見えていないものにアプローチする必要があります。
ケース【すぐ感情的になる従業員】
氷山モデルに基づいて「職場ですぐに感情的になる従業員」の例を分析すると、次のように考察できます。
出来事(表面に現れる事象)
感情的な反応:従業員が会議や職場のやりとりで頻繁に感情的になる。例えば、大声を出したり、不満をすぐに表現したりする。
行動パターン(繰り返される行動の傾向)
- 反応の一貫性:特定のトリガー(批判、変更要求、急な仕事依頼など)に対して過剰反応を示す。
- 対人関係の傾向:他者と衝突しやすい、または感情をコントロールできずに周囲にストレスを与える。
- コミュニケーションの方法:建設的な対話ではなく、感情に基づいた主張が多い。
構造(仕組みやルール、職場環境)
- 組織文化:
- フィードバックが直接的で、感情を刺激しやすい文化がある。
- 感情的な行動が過去に容認されてきた(暗黙の了解がある)。
- 業務の設計:
- ストレスの多いタスクや無理な納期が常態化している。
- チーム内での役割や責任分担が不明確で、摩擦が生じやすい。
- リーダーシップスタイル:
- 支援的なリーダーが不在で、従業員のメンタルヘルスに注意を払う仕組みがない。
- コミュニケーションの場が少なく、従業員が意見を表明する機会が限られている。
メンタルモデル(無意識の前提、認識や捉え方)
- 従業員の内面的な要因:
- 自分の意見が尊重されないという不安や、過去の否定的な経験に基づく「自己防衛」の反応。
- ミスをしたら罰せられるという思い込みや失敗への恐怖。
- 他者に対する認識:
- 「周りは自分を理解していない」「自分が感情的にならなければ物事が進まない」という考え。
- 「批判は攻撃だ」という前提に基づいた過剰な防衛反応。
- 職場の認識:
- 職場は安全な場ではなく、自己主張をしないと不利になるという思い込み。
全体的な分析
氷山の下にある「構造」と「メンタルモデル」は、「出来事」や「行動パターン」を大きく左右します。この従業員の感情的な反応が改善されるためには、以下のアプローチが考えられます。
構造的な改善
- 職場環境を見直し、ストレス要因を軽減する。
- 従業員間で健全なフィードバック文化を醸成する。
- リーダーシップによる支援を強化する。
メンタルモデルの再構築
- 感情的な反応の背景にある無意識の信念を掘り下げ、認知行動療法的なアプローチで働きかける。
- 感情的でない方法でも意見が通るという成功体験を提供する。
行動パターンへの介入
- 感情的になった際の対応策を本人と話し合い、具体的な行動目標を設定する。
- マインドフルネスやストレスマネジメントのトレーニングを導入する。
- このように氷山モデルを使うと、表面に見える「出来事」だけでなく、根本的な原因にアプローチできる道筋を描けます。
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