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コラム

組織のマネジメント

動機づけのために知っておくべき働くことの5つの側面

以前の記事で、マネージャーの5つの仕事をひとつずつ紹介しました。その中の3つめ「動機づけとコミュニケーションを図る」の中で、動機づけのヒントとなるものとして、働くことの5つの側面を取り上げています。

今回は、この働くことの5つの側面をもう少し詳しく取り上げたいと思います。

働くことの5つの側面

ドラッカー教授は、著書『マネジメント〈上〉』で次の様に書いています。

働くことすなわち労働は働く者自身の活動である。それは人の活動である。人の本性でもある。論理ではない。いくつかの力学をもち、いくつかの側面をもつ。

少なくとも、そこには五つの側面がある。それらのいずれの側面においても、働く者が生産的な存在になるためには、成果をあげられなければならない。

P.F.ドラッカー『マネジメント〈上〉』

ここで紹介されている5つの側面が以下の通りです。

  • 第一に、生理的な側面がある。人は機械ではなく、機械のように働きもしない。
  • 第二に、心理的な側面がある。人にとって、仕事は重荷となる一方において、必要ともなる。辛苦となる一方において、祝福ともなる。
  • 第三に、社会的な側面がある。組織社会では、働くことが人と社会をつなぐ主たる絆である。
  • 第四に、仕事とは生計の資である。
  • 第五に、政治的な側面がある。集団内、特に組織内で働くことには権力関係が伴う。

第一の側面

一つ目は生理的な側面です。人は機械とは違う、機械のように働かないということは、わかっているようで実のところ忘れられがちです。

例えば作業単位。機械は原則として一つの単純なことだけを反復して行なうときもっとも生産性があがります。技術の進歩で複雑な作業も可能になってきましたが、単純にこしたことはないということは変わりありません。一方、人は違います。人は一つの動作しか無いと疲れます。そして飽きます。単一の作業よりも、いくつかの作業を組み合わせる方が生産性があがります。

スピードに関してはどうでしょうか。機械はスピードとリズムの変化が少ない方が生産性があがります。これもまた人は逆です。人は同じスピードやリズムで働くことに向いていません。その人固有のスピードとリズムで、そして自分の判断でスピードやリズムを変えることができるとき最も生産性があがります。

つまり、人が生産的であるためには、仕事のスピード、リズム、持続時間を自分でコントロールできる必要があります。そのためにも、仕事そのものは均一に設計する必要がありますが、労働には多様性を持たせる必要があります。

第二の側面

二つ目は心理的な側面です。人にとって仕事とはどのような存在でしょうか。働くとはどういった行為なのでしょうか。ドラッカー教授は、失業が人を傷つけるのは、金銭ではなく尊厳のためであると言います。仕事は、人の人格の延長であり、自己実現の源と言えます。自分が何者かを定義し、自分の価値を測ることができるものです。

このことを忘れて、賃金をもらうための行為という側面だけをみていると、人の生産性はあがりません。

第三の側面

三つ目は社会的な側面です。働くことは私たち個人と社会をつないでくれる主たる絆といえます。社会における位置づけを決めてくれます。医者である、弁護士である、教師である、大工である、配管工である、料理人であるなど、あらゆる職業は、社会における役割を表します。

加えて、昔から働くことは、集団に属して仲間を作りたいという欲求を満たす手段でもありました。働くことを通じてできて社会との結びつきは、時として家族との結びつきとは別の重要なものとなります。

第四の側面

四つ目は経済的な側面です。仕事は生きるためのお金を稼ぐという役割があります。同時に仕事は、経済活動のための資金、つまり経済活動を続けるための手段をもたらします。この二つが競合することがしばしば問題をもたらします。

生きるためのお金を稼ぐ、つまり生計としての賃金と、経済活動のための資金のひとつであるコストとしての賃金。どちらも同じ賃金です。

生計のとしての賃金は、安定的、継続的で、かつその人の生計費、欲求、社会的地位に見合っている必要があります。しかし、コストとしての賃金は、産業や企業の生産性に見合っていないといけません。柔軟で市場に適用できないといけません。生産する商品やサービスに競争力を与えるものでなければなりません。そしてそれは、働く者ではなく顧客が決めます。

この問題を解消することは難しいですが、まずは対立の存在を認識することが重要です。

第五の側面

五つ目は政治的な側面です。人が組織内で働くことには必ず権力関係が伴います。ひとりで、あるいは家族で畑を耕すといった働き方とは違います。多くの場合、出勤日や出勤時間が決まっているように、小さなものも含めて、権力の行使を受けます。誰かが権力を行使します。

人は本質的に自由、つまり自ら決定することを好みます。第五の側面はこの本質に反するのです。しかし、この側面から逃れることはできません。避けては通れない権力の行使と自由のバランスをどう取るかが重要になります。

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