【マネジメント入門⑥】電気自動車にガソリンを入れようとしていませんか?
ドラッカーマネジメントに興味があるけど何から手をつけていいかわからない人のための連載「マネジメント入門」、6回目は知識労働者についてとりあげます。
前回は成果という言葉について取り上げました。ドラッカーマネジメントには成果のように一般的な言葉が一般的な認識とは少し違う意味で使われることがあります。
同時に一般的には使われない言葉も出てきます。その代表格が今回取り上げる知識労働者です。
知識労働者-knowledge worker-とは
知識労働者とは知識労働をおこなう労働者のことを言いますが、ドラッカー教授が作った造語で、自分がもつ知識を使って付加価値を生み出す人のことを言います。
ここで言う知識という言葉も一般的な認識とは少し違います。一般的に知識があるというと、物知りというような、頭の中に情報が詰まっている人をイメージするのでは無いでしょうか。しかし、ドラッカーマネジメントにおいては、頭の中にある情報を仕事で活用して成果につなげることができる状態を知識と言います。つまり、知っているだけではだめで、行動と成果が伴わないといけません。
また、知識労働者には、自ら考え、方向づけ、行動するという行動特性があります。一般的な表現で言うところの自律型人材に近い概念でしょうか。
肉体労働者-manual worker-とは
一方、対する言葉は肉体労働者です。ただし、力仕事をする人という意味ではなく、英語のマニュアルワーカーの方がイメージが湧きやすいのでは無いでしょうか。いわゆる、指示、命令、マニュアル通りに作業する人を言います。
あなたはどっち?
ナレッジワーカーとマニュアルワーカーという2つの言葉を紹介しましたが、あたなはどちらでしょうか?
答えをお伝えします。
あなたはナレッジワーカーです。
「職業も聞かずにどっちかわかるの?」「読んでいる人が誰かわからないのに言い切るなんて無責任だ」なんて声が聞こえるかもしれませんが、現代社会で働く人はほとんどが知識労働者と言っても過言ではありません。少なくとも、このコラムに辿りついて読んでいる人は間違いなく知識労働者です。
もう少し正確にお伝えしましょう。
説明上、ナレッジワーカーとマニュアルワーカーという両極端の概念を説明しましたが、現実はもう少し複雑です。場合によってはナレッジワークを、また別の場面ではマニュアルワークをする人がほとんどでしょう。100%ナレッジワーク、100%マニュアルワークをしている人はいないのでは無いでしょうか。そういう意味で、配分は人それぞれかもしれませんが、誰しもナレッジワーカーである時間があります。
組織づくりがうまく行かない理由
多くの中小企業で、組織づくりがうまくいかないという課題を抱えています。
その原因のひとつが、今回取り上げたナレッジワーカーという概念をしらないということです。ナレッジワーカーという言葉は比較的新しい概念です。もともと産業革命の時に、工場で見ず知らずの他人同士が大勢集まって同じ場所で働くということを始めた時には、ほとんどの労働者がマニュアルワーカーでした。それ以後、長い間マニュアルワーカーの時代が続いて来たのです。
しかし、第二次世界大戦後にナレッジワーカーが急増し、いつの間にか世の中の労働者のほとんどがナレッジワーカーになります。
しかし、それに気づかない、そもそもナレッジワーカーという概念を知らない、そのため、自分がナレッジワーカーだということを知らない、自社の従業員がナレッジワーカーということを知らないという状況に陥り、かわらずマニュアルワーカーに有効なマネジメントをやっていないでしょうか。
組織づくりがうまく行かないのはこのためです。
例えるならば、目の前にあるのが電気自動車という新しいものだと知らずに、必死にガソリンで動かそうとしているようなものです。
ナレッジワーカーという概念を知り、ナレッジワーカーにあった組織づくりをしていきましょう。
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