環境問題と組織の5つの共通点
先日、とあるネット番組でコメンテーターが「環境問題が個人の意識と行動に定着しない理由は組織にもあてはまる」というような趣旨の発言をされていました。個人的になるほどと思ったので、改めて環境問題が個人の意識と行動に定着しない理由を整理し、それがどのように組織にも言えるのか、そしてどうすれば解決できるのかを考えてみたいと思います。
環境問題が個人の意識と行動に定着しない理由
様々な理由がある様ですが、まとめると次の5つを上げることができます。
- 問題の距離感
- 即効性の欠如
- コスト
- 他者依存
- 情報の複雑さ
問題の距離感
環境問題は多くの場合、個人の生活と直接的な関連が見えにくいことがあります。地球温暖化や海洋汚染などは、日々の生活からは遠い問題に感じられ、具体的な危機感を抱きにくいのです。
組織に置き換えるとどう考えることができるでしょうか。組織の問題、また問題に限らず、様々な課題や起こっている事象は、環境問題と個人ほどの距離はないとはいえ、やはり同様に距離があると言えます。日々、組織の視点で物事を見て、組織に起こるあらゆる事象を把握している経営者から見たら当たり前のことは、従業員にとって当たり前ではありません。まずはこの当たり前という感覚を捨て、起こっていることが一人ひとりの従業員にとってどういう影響や関係があるのかをわかりやすく伝える必要があります。
従業員一人ひとりが「わたしは」ではなく「われわれは」という視点で考える組織風土を作ることが重要になります。
即効性の欠如
環境への配慮や行動は、長期的な影響や将来世代への配慮が重視されます。しかし、その効果が目に見えにくい、あるいは即座には感じられないため、行動のモチベーションが維持しにくいという課題があります。
たびたびお伝えしている行動の原理に関わる理由です。やったとしてもその結果がわかりづらいということです。組織も同様です。組織に属する個人がひとりで何か行動したとしても、組織全体に与える影響は大きくありません。最悪何も変わらない事もあります。しかし、組織は個人の集まりである以上、ひとりの行動からしか変化は起きません。その小さな行動を喚起するためにも、従業員の望ましい行動に対して適切なフィードバックをする仕組みを作りましょう。
コスト
環境にやさしい選択は、多くの場合、追加の時間やコストがかかる場合があります。リサイクル、エコ商品選択、省エネなども、少し手間や費用がかかるため、経済的・時間的負担がない従来の習慣のほうが優先されやすい傾向があります。
組織において何か行動を起こそうとするとやはりコストがかかります。ここで言うコストは、労力と言った方がイメージしやすいかもしれません。そのままの方が、何かことを起こすよりもストレスなく過ごせることが大半です。これを少しでも防ぐために、行動しやすい組織風土をつくり、ひとりに負担が集中しないような仕組みがあると良いかもしれません。
他者依存
環境問題は「自分一人の努力では解決しない」という感覚があるため、企業や政府の取り組みに頼る傾向もあります。個人が行動しても全体のインパクトが限定的だと感じられ、責任を他者に転嫁する心理も働きます。
組織においても自分一人が行動しても解決しないから、会社が、社長が動くべきだという考えがよく聞かれます。もちろんそういう側面があるのは否定しませんが、会社や社長が動いてくれることを期待しただけでは組織は変わりませんし、仮に会社や社長が動いたとしても、従業員の協力が無ければ変わりません。まずは気付いた人が自分事として動き始めることが重要です。
情報の複雑さ
環境問題に関する情報は専門的で複雑な場合が多く、どのような行動が効果的なのか理解しにくい場合もあります。また、さまざまな意見や情報が交錯し、「本当にこれが正しい行動か?」と迷うことも定着しない理由の一つです。
組織においても、組織運営に関わることは専門的で複雑なものです。そのため、経営者と新入社員ではもっている情報に大きな差があります。この差をゼロにすることはできませんが、少なくとも対象となるトピックにおいて会話ができるように、差を少しでも減らす取り組みが必要です。
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